カナダのクリス・レービス (Chris Lavis) さんとマシー・シェボウスキー (Maciek Szczerbowski) さんによる2007年の作品『Madame Tutli-Putli』(トゥトリ・プトリ婦人) という人形アニメーションです。
とてもおもしろいですよ。
2008年の第80回アカデミー賞・短編アニメーション部門にノミネートされました。たくさんの荷物をかかえ、夜行列車に乗り込む女性、トゥトリ・プトリ婦人。
大荷物は彼女の現実の全財産であり、また彼女の過去の幻影でもあります。
見知らぬ人に対する怖さと優しさに直面しながら彼女はひとり旅をします。
日がおちて、急に列車が止まってしまい彼女は不安になりますが、同乗者はみんな寝てしまっていて誰も気付きません。
少しすると列車は走り出しますが…。
作品は17分くらいですが、途中から現実と空想が入り交じり、彼女の闇の部分のダークな世界に引き込まれていきます。
▼作品はこちらで見れます。
人形アニメーションといっても、目と眉毛の部分は実写を合成していて、表情がとてもリアルです。専門家の人たちの間では、こういった手法がはたして人形アニメーションとしてはどうなのか、と賛否両論だったようです。
専門的なことはよくわかりませんが、確かに人形アニメーションとして見ると違和感があるかもしれません。
でも目は口ほどにものを言うというか、目が人形に魂を吹き込んでいるようで、この難解でダークなストーリーにとても合っていると思いました。
最初は、現実の世界で疲れきった婦人の自分探しの旅のような、ヒューマンドラマなのかなーと思って見てましたが、途中から話が急展開していき、どこまでが現実で何が彼女を追いつめているのか、よくわからないまま終わってしまいました。
闇の臓器売買人たちが、臓器を集めるため列車を止め皆殺しにし、実は婦人も殺されていた、というサスペンスっぽい内容なのかなとも思いましたが、向かいに座っていたテニスマンが最初にお腹をさすっていたので、もう売買後で傷がうずいてるのかもとも思いました。
テニスマンは闇で臓器売ってて、トランクに入ってる人たちは無賃乗車っぽいし、少年が読んでる本は、「敵を操る方法」みたいなトリセツ本だし、おじいちゃんはよくわからないけど。ゴーストが乗った列車に死神が迎えに来たけど、婦人は気付いて逃げ出し天国に行ったとかの、銀河鉄道の夜のダーク版みたいなお話なのかなとも思いました。
いろいろな解釈が出来そうですけど、みなさんはどうでしょうか。
オフィシャルサイトはこちらです。
⇒ Madame Tutli-Putli
morinof さんより
ふぅ~。映像に魅かれてつい最後まで見てしまいました。曖昧な記憶と妄想の複合産物のような物語ですね。
トランクの彼らの、翻弄されるチェスに人生観がみえたり不確定な孤独感や閉塞感、畏怖のようなものが全編に覗いてみえつい、映像の小片を拾い上げて謎解きをしたくなりましたがストーリーの構成は夢のようなもので、繋ぎ換えて見ればどうにでも解釈が変わるようで、途中で謎解きはやめにしました。
目だけは実写だとか。特に後半の濡れた瞳に魅かれます。傍観者に視点を合わせようとしない目をずっと追い続けながらただ音楽を聞いたり風景を見るように心で深く呼吸して観終わった後に、妙に心地良い深層疲労を感じています。
私の狭い行動半径では出会えない映像でした。有難うございます。
CHR (管理人)より
ブログを見て頂きありがとうございます。
morinofさんの感想を読んで、新たに納得するところがありました。
不思議な魅力のある映像ですよね。
現代音楽のような音楽がまた映像を盛り上げていていいです。
丁寧なコメントありがとうございました。とってもうれしかったです◎