テリー・ギリアム監督作品『Dr.パルナサスの鏡』を観て来ました。
ギリアムワールド全開でいろんな後味を残す、すごい作品でした。おもしろかったです。
今回は内容とかの前情報を、ほとんど入れずに観に行きました。
最初は、何?誰?いつ?と設定の状況判断に戸惑いつつ、ギリアムの表現する”汚い”感じが相変わらずすごくて、感嘆しつつも、考える間もなくどんどんお話の中に入り込んでしまいました。テリー・ギリアム監督は『未来世紀ブラジル』『バロン』『フィッシャー・キング』『12モンキーズ』『ラスベガスをやっつけろ』『ブラザーズ・グリム』『ローズ・イン・タイドランド』などの作品を手掛けています。
また監督はイギリスのコメディユニット『モンティ・パイソン』のメンバーで、モンティ・パイソンシリーズにも関わっています。
「未来世紀ブラジル」や「バロン」もすごいよいです。どの作品もとてもおもしろいです。「ラスベガスをやっつけろ」は特に好きです。
ジョニー・デップのハゲ面なところも見所ですが、「Viva Las Vegas」の曲をエルビス・プレスリーでなく、デッド・ケネディーズのカバーを使ってるのもたまりません。
監督は原作をアレンジした作品も多いのですが、今回の『Dr.パルナサスの鏡』は、「未来世紀ブラジル」と「バロン」(バロンも原作ありますが) を一緒に脚本した、チャールズ・マッケオンとの新たなコラボ作品です。
2007年、ロンドン。パルナサス博士が率いる旅芸人の一座が、街にやって来ました。
住処にもなっている馬車が、可動式の舞台となり、一座は出し物をして暮らしていました。
その出し物は、人が密かに心の中に隠し持つ、夢や野望や欲望を、鏡の向こう側の世界に創り出す摩訶不思議な装置『イマジナリウム』です。
パルナサス博士の鏡をくぐりぬけると、そこにはその人の想像が生み出す不思議な迷宮が広がっています。
しかし博士には、悲しい秘密があり何かに怯えていました。
以前、悪魔Mr.ニックと不死と若返りの契約をし1000歳になる博士。
契約の条件は、愛娘が16歳になったときに悪魔に差し出すというものでした。
もうすぐ娘の16歳の誕生日です。
怯えるパルナサス博士の前に悪魔Mr.ニックが現れます。
博士は悪魔と新たな賭けをします。
そんな時カードのお告げか、偶然救った記憶喪失の青年トニーが一座に加わりました。
トニーのビジネス的なアイディアや営業で、イマジナリウムは生まれ変わり、博士は最後の賭けに出ます。彼らは、娘を守ることが出来るのでしょうか…。
そんなダーク・ファンタジー作品です。博士の過去とか、とてもファンタジーです。
「ローズ・イン・タイドランド」ではギリアム監督の”狂気”な部分がだいぶ出てたと思うのですが、今回はとてもファンタジーだなぁと思いました。
製作に監督の娘のエイミー・ギリアムが携わってるのですが、彼女がこの作品を、テリー・ギリアムの”狂気”から守ったそうです。
【パルナサス博士】クリストファー・プラマー:「インサイド・マン」「12モンキーズ」「サウンド・オブ・ミュージック」など。声の出演:「9」「カールじいさんの空飛ぶ家」。
【Mr.ニック】トム・ウェイツ:「コーヒー&シガレッツ」「フィッシャー・キング」「ダウン・バイ・ロー」など。
【ヴァレンティナ】リリー・コール:イギリスのスーパー・モデル。
【トニー】ヒース・レジャー:「ダーク・ナイト」「ブロークバック・マウンテン」「ブラザーズ・グリム」「パトリオット」など。
【想像世界のトニー:1】ジョニー・デップ:「アリス・イン・ワンダーランド」「パイレーツ・オブ・カリビアン」「GO!GO!L.A.」「ギルバート・グレイプ」「シザー・ハンズ」など。
【想像世界のトニー:2】ジュード・ロウ:「シャーロック・ホームズ」「コールド・マウンテン」「A.I.」「リプリー」など。声の出演:「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」。
【想像世界のトニー:2】コリン・ファレル:「マイアミ・バイス」「デアデビル」「S.W.A.T.」「フォーン・ブース」「マイノリティ・リポート」「タイガー・ランド」など。
【アントン】アンドリュー・ガーフィールド:「BOY A」「大いなる陰謀」など。
【パーシー】ヴァーン・J・トロイヤー:「オースティン・パワーズ」「ハリー・ポッターと賢者の石」「メン・イン・ブラック」など。
この作品の現実世界のシーンが撮り終わり、年をまたいで想像世界のシーンを撮るまでの間の休みの期間に、トニー役のヒース・レジャーが亡くなりました。
彼の遺作となってしまったこの作品。ヒース・レジャーの最後の演技も見所です。
当時は製作中止になるのでは、ヒース・レジャーが首つりしてるシーンが死を暗示していた、などといろいろ言われてましたが、彼と仲の良かった3人が後を引き継ぎ無事に完成しました。
トム・クルーズが後任を申し出たそうですが、ギリアム監督がヒースと親しい役者さんにお願いしたいからと断ったそうです。
ジョニー・デップは他の仕事のため、わずか1日半で撮影したそうです。
また、3人は今回のギャラをヒース・レジャーが溺愛していた彼の娘マチルダちゃんに全額送ったそうです。
3人が演じているのが鏡の向こうの世界なので、トニーがこの世界では見た目が変わるという設定になってましたが、違和感なく観れました。
ヴァレンティナ役のリリー・コールが16歳とは思えない肉体美を持ちつつも、あどけない少女な感じで、すごくかわいかったです。彼女はスパー・モデルとして成功を収めてますが、これから女優さんとしても活躍しそうですね。
マリリン・マンソンが2005年に製作発表した監督デビュー作品で、「不思議の国のアリス」の作者ルイス・キャロルを題材にしたファンタジー・ホラー「Phantasmagoria: The Visions of Lewis Carroll」に、アリス役で出演が決まってますが、撮影が延期されてました。
現在どのくらい話が進んでいるのかわかりませんが、まだ製作中なようです。
マリリン・マンソンはジョニー・デップにも熱心にオファーしてたようですが、どうなったのでしょうかね。
撮影は、同監督作品「ローズ・イン・タイドランド」「ラスベガスをやっつけろ」も手掛けた、ニコラ・ペコリーニ。
鏡の向こう側の想像世界がとても素敵でした。
舞台上にある鏡の中に入って行く所が、よくあるCGで鏡面が水面のようにふにゃ~ってなるのではなくて、”大道具”っぽい作りになってるところが旅芸人一座の舞台って感じでかえって良かったです。
この鏡の向こうにあんな世界が広がっているなんてすごい。
原題は『 The Imaginarium Of Doctor Parnassus 』でDr.パルナサスの”想像館”みたいな感じだと思うのですが (最初邦題は「Dr.パルナサスの想像力」でした)、この想像空間に想像力と豊かな夢の力の大切さを伝えたいという監督の思いが込められています。
この想像の世界はロンドンのポロックスおもちゃ博物館にインスピレーションを受けて作り始めたそうです。
パルナサス博士は監督自身で、金儲け主義の中、流されずいい作品を作りたい、人の心を動かし、目を開かせ、世界の真実に気付かせようというアーティストの葛藤を描いてるそうです。
監督自身、過去の作品で配給会社と意見が合わなかったり、資金繰りに苦労したり、災害などで製作中止に追い込まれたりと、自分の作品を表現し続けるのに苦労しているからなのかもしれません。
『The Japanese Sandman』という曲がクレジットされてました。ジャズなのですが、歌が付いてるのがあって、歌詞の内容が、日本の眠りの精が現れたよ。あいつは君の過去と新しい寿命を交換してくれるよ。というような内容です。
Sandman はおとぎ話に出てくる子供を眠らせる精らしいです。
もともと眠らない子の目に砂を入れたり、目をくり抜いたりする残酷な妖怪みたいなもので、Sandman がくる前に寝なさいということらしいですが、あまりにも残酷なので、今は眠りの精という感じになってるみたいです。
日本版予告編です
▼ 追記
動画が削除されたので外しました。
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社会の闇や人の心の闇、人生哲学までいろんなテーマが盛り込まれています。
観た後にいろんな感覚を残す、とてもいい映画でした。
DVD化したらデジタル映像で見れるのが楽しみです。
昨年、「300」のザック・スナイダー監督によって『ウォッチメン』が映画化されました。この作品もとてもおもしろかったのですが、テリー・ギリアムも以前『ウォッチメン』の監督に選ばれてました。チャールズ・マッケオンが脚本の書き直しをしたのですが、予算が足りなかったので実現出来ず、2時間程の映画にしてしまうと「ウォッチメン」の基本要素を取り去ることとなると感じ、2度目のオファーも辞退したそうです。
ギリアム監督の「ウォッチメン」も観たかったです。
また災害などで製作中止になった『ドンキホーテを殺した男』が今年撮影再会するそうです。キャストは変わってしまうみたいですが、楽しみです。
今後もいい作品を作り続けて欲しいです。
日本公式サイトはこちら。
⇒ 映画『Dr.パルナサスの鏡』公式サイト
イギリスオフィシャルサイト。あんまりないです。
⇒ The Imaginarium Of Doctor Parnassus
イギリスサポートサイト。デザイン画や作製秘話が見れます。
⇒ The Imaginarium Of Doctor Parnassus Suppot Site
アメリカオフィシャルサイト。
右下の「ENTER SITE」から入ったところが作りがかわいいです。
⇒ THE IMAGINARIUM OF DOCTOR PARNASSUS